フィクション中受小説②|SNSで他の子の成績を見てしまう夜。父の胸に去来する「祝福」と「微かな敗北感」

1.中学受験
Two girls who study

夜23:00

娘は翌日の予習に備えて机に予シリと演問を並べて、ぐっすり眠っている。
リビングの明かりを落とし、私はソファに沈み込んだ。今日一日の労をねぎらう静かな時間。NEWS23を見ながら思わずスマートフォンを手に取る。

XやInstagramの中学受験界隈――通称「沼」へと脳を進める。


「いいね!」や「さすが!」の言葉が飛び交うタイムライン。次々と投稿が滑り込んできた。

「組分けテストで、娘が初めて偏差値70を超えました!この一カ月、よく頑張ったね😭」
 

添付された画像には、眩しいほどの三桁の点数と、赤字で囲まれた輝かしい「72」の数字。

それを目にした瞬間、私の胸には複雑で、形容しがたい感情の波が押し寄せた。

1.「いいね」の裏側で、微かに軋むプライド

まず、頭の中で「おめでとう、すごいね!」と純粋に祝福する声が響く。
それは嘘偽りのない感情だ。しかし、同時に別の、もっと個人的で厄介な感情が湧き上がってくる。

「うちの娘は、このテストで、算数の点数に20点も足りなかったな・・・」

比較の対象は、いつも一番近くにいる「わが子」だ。
他人の成功は、自分自身の伴走の「成果」に対する静かな査定のように感じられる。。。

私が「いいね!」のアイコンをタップする指先には、祝福の熱とともに、微かな冷たさが走る。
その一瞬だけ、私は「親としての私」の成績も、この画面で比較されているような、そんな妄想に囚われるのだ。

親として、私は知っている。「受験は水物だ」「他所は他所、うちはうち」という真理を。
偏差値はあくまで指標であり、最終的なゴールではないことを。
だが、疲れた夜、理性のタガが緩んだ瞬間に、感情は最もシンプルで残酷な評価軸へと引きずり込まれる。


——もしかして、私のアドバイスが間違っていたのではないか?


この夜の複雑な感情の正体は、娘の成績への不安というよりも、むしろ「親としての自己承認欲求」なのではないか。
娘を合格に導くことで、自分自身の価値を証明したいという、エゴイズムに近い欲求。
そのエゴが、Xの成功報告によって、チクリと刺されるのだ。
 

2.静寂の中で見る、娘の小さな戦い

スマホを静かにテーブルに伏せる。画面に映っていた輝かしい成功の影が消え、夜の静寂が戻ってくる。

立ち上がり、娘の部屋を覗き込んだ。布団が少しはだけ、小さな寝息を立てている。
机には、予シリが開きっぱなしになっている。そこには、私が週末に特訓した「円とおうぎ形」のページがあった。

テキストには、娘がシャーペンで何度も書き直した跡がある。消しゴムで強く消したせいで紙が薄くなっている部分もあれば、理解が深まった瞬間に書き込んだと思われる鮮やかな赤のチェックマークもある。

その「戦いの跡」こそが、娘が日々積み重ねている真実の努力だ。
Xのタイムラインにあるのは、たった一瞬の「結果」に過ぎない。しかし、この部屋のテキストにあるのは、数時間におよぶ「過程」そのものだ。

私はXの成功を見て、無意識のうちに「結果」を求めてしまっていた。だが、親が本当に目を向けるべきは、「結果」に至るまでの娘の「過程」と「努力の質」ではなかったか。
 

3.戦うべき相手は誰でもない

静かに布団をかけ直し、そっと部屋を出た。

Xの向こう側にいる子も、私の娘も、それぞれが与えられた環境と能力の中で、懸命に戦っている。
その戦いを比べることに、何の意味もない。

私が戦うべき相手は、眩しい偏差値を手に入れた誰かの子ではなく、「昨日の娘」と「今日の私」だ。

明日は、娘が自力で解こうともがき苦しんだその算数のページを、冷静に、そして温かい目で見直そう。
そして、彼女が自ら考え、一歩踏み出した「戦略的なほったらかし」の勇気を褒めてあげよう。

スマホの通知をオフにし、静かに寝室に向かう。

戦いの夜は明ける。そしてまた、新たな伴走の日が始まるのだ。

プロフィール
🚀 偏差値狂いのパパって何者?

娘ちゃんの成績に一喜一憂し、日々「偏差値」という魔物とロジカルに戦う偏差値狂いのパパです!📈💥🤯

  普段は普通のオフィスワーカーをしつつ、FP1級の知識で家計サポートの副業をしています。さらに理科の教員免許まで持つ、自他ともに認める「分析オタク」な父です!🏗️📊💰

  中学受験では、子どもという主役を輝かせるためのバディミッション!と確信しています🛡️✨🚀

  2028年組みんなの合格を目指し、共に泥臭く戦い抜きます!🔥🌸✨

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